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トイレは恋の生まれる場所

2013.08.17.Sat.22:21
「っふ、は…っ」

一人の男が甘い声を上げ、狭い個室にその声が小さく反響する。
他に誰もいない、奥まった場所にある駅のトイレで、男は自慰行為に耽っていた。

金曜日の仕事帰り、家路に着く為に使う駅でこの行為を行う事が、いつしか男の予定となっていた。誰かが来るかも知れない場所で乳首を弄り、壁にもたれてペニスを扱く。イけない事をしている意識が、男をより興奮させていた。

「あ…イく」

小さく呟いて、男はペニスを擦る手の動きを早めた。左の乳首も、強く摘まんで引っ張る。目を閉じながら男は身体中を跳ねさせ、勢い良く射精を迎えた。
和式の便器に精液がかかり、薄い青をした床のタイルも少し白く汚れた。

「はー…ふぅ」

放出の余韻に浸り、全身から力が抜ける。ちょっと休んだらキレイにしよう。そんな事を男は考えていた。
個室の扉が開かれる、その時までは。

「ふふ…すっきりした?」
「え…!?」

見も知らない、若い男。男は驚いて声を出そうとしたが、その口は手で塞がれてしまった。

「大きな声出さないで。アンタの方が困るだろ?」
「…………」

小さく笑って言われ、確かにそうだと男は気付く。それを確認して、若い男は口を覆っていた手を離した。

「お兄さん、金曜日にいつもこうやってオナってるんでしょ。俺、知ってるよ」
「な…っ?」

なんで知ってるんだ。いぶかる男に、若い男はまた笑った。

「別に駄目なんて言うつもりは無いし、脅すつもりも無いよ。ただ…アンタに感じてるとこ見せてほしいな…ってね」

しゃべりつつ、若い男が男の手を持って乳首にあてさせる。左手だけでなく、右手も。
そしてされるがままに、男は指で自分の乳首を摘ままされた。訳が分からず若い男を見ると、短く指示された。

「乳首、弄って」

突然に現れた若い男に言われて、男は戸惑うが指を動かし始めた。
それは、弱みを握られているからだけではなく、若い男の目が…あまりに自分を熱く射抜いているから。

「あ…あん」
「アンタ…そんな風に弄るんだ。すっごく、エロいよ」

年下の男に、乳首を捏ねるところを見られる。いつもは一人でしている行為を穴が空く程見つめられて、男は身体が火照っていく。
うるさいくらいに心臓を高鳴らせて、男は疑問を投げかけた。

「んっ…お前、ど、して…俺を」
「知ってるのかって? そりゃ、アンタと同じ電車を使ってるから」

若い男がすっと近付き、男のあごを緩く掴んだ。優しく上を向かされ、キス寸前の場所まで迫った唇に吐息がかかる。
相手の瞳に自分が映っていて、男は身体がぞくっと震えた。

「最初に見た時は電車の中で息を荒くしてて、具合悪いのかな、って思ったけど。こんな目立たないトイレに入ってくとこ見て追いかけて、聞こえちゃったんだよね。可愛い喘ぎ声」
「かわ…いい?」

本来男に対する褒め言葉じゃないのに、褒められて男は嬉しくなった。

「あぁ、アンタ可愛いよ。声も、顔も…自分でアナルにローター入れてる、淫乱なとこも」
「え…あぁっ!?」

知らぬ間にズボンの後ろポケットに入れていたリモコンが若い男の手にあった。男は取り返そうと思ったが、相手がリモコンを操作するのには間に合わなかった。
体内でしていたかすかな振動音が大きくなり、腸内の淫具が暴れ出す。同時に若い男にペニスを握られ、優しく扱かれ、男は快感に打ち震えた。

「ほら、ちゃんと乳首も弄って」
「んむ、はぷ…っ!」

唇を奪われ、命令されて。男はキスをされながら乳首を指で弄り、自ら挿入した淫具でアナルを刺激されてペニスを擦り上げられる。
もう、相手が誰とか、ここが駅とか考えられない。
むしろ、こうされる事を望んでいたからこそ、男は与えられる快楽へと違和感無しに溺れていった。

「んふぅ、むぅっ」
「エロい顔。ずっと…こうやって見たかった」

かすれた声で告げられ、男は全身が敏感になった。

「んぐっ、んぅーっ…!」

限界を伝える間も無く、男は精液を吐き出した。若い男は力が抜けて崩れそうになる男を、しっかりと支えた。
そして、バツが悪そうに語り出す。

「言い忘れてたけど…俺、アンタの事好きになったんだよね。んで…よければ、俺の家で続きしない?」

…そうか。こんなに気持ち良かったの、好きだって想われてたからなんだ。
納得して、男は返事をした。

「…うん」

服を整え、中を拭いて、二人はトイレを後にした。
そのトイレはその後、男の一人遊びに使われる事は…もう無かった。





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